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臨界期仮説とは?大人になってからの英語学習は無意味?その疑問にお答えします
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英語学習に関する情報収集をするなかで、「臨界期仮説」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。臨界期仮説は言語の習得に関する学説の一つですが、捉えようによっては「言語の習得には年齢制限がある」とも読み取れる説です。そのため、「大人になってからの英語学習は無駄なのでは?」と不安に駆られる英語学習者も少なくないでしょう。
そうした不安を払拭するためにも、臨界期仮説がどのような説なのかを理解しておくことが大切です。そこでこの記事では、臨界期仮説について英語学習者が最低限知っておきたい事項を解説します。
大人になってから英語学習に取り組むうえで、理解しておきたいポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
臨界期仮説とは?
臨界期仮説(Critical Period Hypothesis)とは、「言語を完璧に習得できるのは一定の年齢(臨界期)までである」とする説です。
疾病や障害などの例外を除き、子どもが母語の習得に失敗することはありません。身近な環境で考えても、日本人の子どもが小学生や中学生になっても日本語を話せないというケースは少ないでしょう。これは、他の言語であっても同様です。
このように母語の習得率が非常に高いのに対して、外国語をうまく習得できるかどうかは、ケースによって大きく異なります。なぜ、母国語と外国語のあいだでこれほどまでに習得率に差が出るのか、研究者たちはさまざまな要因を検討してきました。
そうした議論のなかで、学習を実施する年齢に着目した仮説の一つが、臨界期仮説です。臨界期仮説の要点は、「言語を円滑に習得する能力は、幼児期から思春期頃までにしか存在せず、それ以降の言語習得は困難を極める」というものです。
もともと臨界期とは、「ある行動を学習するのが唯一可能な期間」を意味する動物行動学の概念であり、この概念を人間の言語学習に応用したのが「臨界期仮説」です。
臨界期仮説は、思春期を過ぎて英語学習に取り組む方にとっては、あまりにショッキングな内容だといえます。そこで次章以降では、もう少し詳しく臨界期仮説について見ていきましょう。
臨界期仮説では、何歳までが「臨界期」とされる?
臨界期仮説において、具体的に何歳までが「臨界期」にあたるのかは、研究者のあいだでもいろいろな見解があり、統一された結論はまだありません。ただ、一般的には、幼児期から思春期頃(12~13歳くらい)までが臨界期とされることが多いようです。
例えばある実験では、15歳までに英語を学び始めた被験者と、15歳以上で英語を学び始めた被験者とを比較すると、前者の英語力は後者に比べて非常に高いという結果が出ました。この実験では、幼少期から自然な言語環境で英語を学んだ被験者グループが、最も高い言語習得率を叩き出したそうです。
ただ、臨界期仮説と一口にいっても複数の学説があり、なかには「外国語の習得能力が、母語の処理能力の向上によって失われる」とする説もあります。ある研究では、1歳未満の赤ちゃんは母語の処理能力が未確立であるため、外国語の音声識別が比較的容易である、と結論付けています。この説が正しければ、臨界期はかなり早い時期ということになるでしょう。
そもそも、ネイティブレベルの言語習得が可能な期間については多くの説があり、臨界期仮説はそうした学説のうちの一つにすぎません。臨界期仮説は、大人の言語学習者にとってショッキングな説だということもあり、近年インターネットなどを中心に広まりつつあります。ただし、あくまでも仮説であり、絶対的に正しいと立証されたわけではないことを知っておきましょう。
【臨界期仮説】英語学習は何歳から始めるべき?
「英語学習は何歳から始めるべきか?」というテーマについても、臨界期仮説と同様に、未だ明確な結論は出ていません。しかし、さまざまな説において共通しているのは「学習開始が早ければ早いほど、言語をスムーズに習得できる」という点です。
子どもは、母国語で正確に言語情報を処理する能力がまだ確立していないため、かえって英語の音を自然に習得できる、といわれています。第二言語習得について“Older is faster, younger is better.”、つまり「大人のほうがはやく上達するが、子どものほうが高い言語能力を身に付ける」といわれるのも、このためです。
ただし、「子どものほうがスムーズに外国語を身に付けられる」といえるのは、適切な学習環境(ESL環境:English as a Second Language)のもとにいる場合に限ります。例えば、週に1回英会話教室に通うといった程度では、たとえ学習者が小さな子どもであっても、その学習効果はかなり限定的になるでしょう。
言い換えれば、学習時期よりも適切な学習頻度が大切であるともいえます。英語をはじめとする言語の運用は、スポーツと同じ単なる「身体運動」です。したがって、いくつになってからトレーニングを始めても、うまく言語を使いこなせるようになります。
このように考えると、臨界期仮説を根拠に「勉強しても無駄なのでは?」などと心配をせず、コツコツと学習を続けるべきだといえるでしょう。
【臨界期仮説】英語の早期教育は日本語力に悪影響をおよぼす?
臨界期仮説に基づいて、できるだけ早期に外国語を学ぶべきだと考える方もいるかもしれません。しかし、外国語の前にまずは母国語をきちんと身に付けないと、どちらも中途半端な言語能力になり、かえって悪影響が出るという主張もあります。この説について考えてみましょう。
2ヵ国語を併用するバイリンガリズム(bilingualism)は、第二言語と母語との関係によって、以下2種類に分けられます。
・「付加的/加算的バイリンガリズム(additive bilingualism)」
・「削減的/減算的バイリンガリズム (subtractive bilingualism)」
付加的/加算的バイリンガリズムは、第二言語の習得によって母語のスキルや文化が損なわれることなく、どちらの言語も健全に利用でき、価値観が広がるとするものです。一方、削減的/減算的バイリンガリズムは、第二言語の習得によって母語のスキルや文化が失われてしまうとするものです。
これらについて、母語の使用機会が著しく少なくなるような状況にあると、削減的/減算的バイリンガリズムに陥りやすいといわれています。日本語を母語とする人が日本で英語を学ぶ場合、日本語を使う機会が大幅に減るようなケースは稀でしょう。したがって、日本で勉強する場合は、早期の英語学習によって日本語能力の発達が著しく阻害される可能性は低いといえます。
海外においても、早期に2つ目の言語習得を開始し、母語・第二言語ともに問題なく習得できたというケースは多く見られます。極めて幼いうちに、母語を使用する環境を離れるなどの状況がない限り、第二言語習得による母語への大きな影響はないといえるでしょう。
そもそも、日本人が目指すべきなのはネイティブレベルの英語ではない!
臨界期仮説を解説するなかで、ネイティブスピーカーと同じレベルの言語習得を目指すには、なるべく早い時期の学習が推奨される傾向にあると説明しました。
しかし、「大人になってからの英語学習ではもう遅い」と落胆する必要はありません。なぜなら、そもそも日本人がネイティブレベルの英語を目指す必要性はないからです。
日本語を母語とする私たちが目指すべきなのは、完璧な「ネイティブレベルの英語」ではなく、世界のどこに出ても恥ずかしくない「世界レベルの英語」です。
英語圏で生まれ育った人と同じように話せることよりも、国際的な場における、対等なコミュニケーションを目指すことが大切なのではないでしょうか。そもそも、日本人にとって前者は高すぎる目標であるため、後者を目標として学習に取り組むほうが、結果的にうまくいくケースが多いでしょう。
したがって、臨界期仮説についてあまり気にしすぎる必要はありません。英語力向上を諦めず、自分の目標に向かって、これからもコツコツとトレーニングを重ねましょう。
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臨界期仮説は「言語を円滑に習得する能力は幼児期から思春期頃までにしか存在せず、それ以降の言語習得は困難を極める」という仮説です。
「学習開始が早ければ早いほど、スムーズに言語を習得できる」という説は多く見られますが、これはあくまでもESL環境での話であることに注意してください。英語のESL環境にない日本に住む人にとっては、学習時期よりも重要な要素がたくさんあるのです。
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